とあるコーヒーショップでのことです。
(客)このコーヒー、酸化しているので取り替えてもらえませんか?
(店員)申し訳ございません。
淹れたてですので、お取り替えしても同じ味になってしまいますが。
(客)豆は○○ですよね。これほど酸味が強くは出る筈はないので確認してもらえますか?
(店員)申し訳ございません。酸味を感じられるかどうかはお客様ご自身のことですので。
(客)いえいえ、いつもこの店で同じものを頼んでいますが、今日のは違いますよ。
(店員)申し訳ございません。お取り替えしても同じ味になってしまいますが、よろしいですか?
(客)同じ味では困ります。取り替えるのが目的ではないですから。
ちょっと飲んでみてもらえますか? 酸味ないですか?
(店員)申し訳ございません。私には感じられません。すぐにお取り替えいたします。
(客)それでは、取り替えてください。
・・・
(客)やっぱり同じ味ですね。酸味の強いコーヒーは飲めないので、
別のものに替えてもらえますか?
(店員)別のものというとこでしたら、再度ご購入ということになってしまいますが、
よろしいですか?
(客)差額ですよね?
(店員)申し訳ございません。再度ご購入ということでお願いします。
(客)差額じゃないんですか?
(店員)申し訳ございません。再度ご購入ということでお願いします。
(客)これやっぱり酸味強くありませんか?
(店員)申し訳ございません。
(客)いや、だから酸味強くないですか?
(店員)申し訳ございません。
(客)・・・
席で聞いていた私も同じものを頼んでいたのですが、いつもより酸味は感じるものの、
砂糖とミルクをたっぷり入れているのでだいぶ中和されていました。
ブラックでははっきり分かるのでしょう。
気になったのは店員の「申し訳ございません」という言葉です。
謝罪の気持ちは感じられず、会話になっていません。
お客さんの声もだんだん大きくなっていきました。
聞いているこちらも客サイドに加勢しようかと思うくらいイライラしてきました。
「確かにいつもより酸味強いですよ」と。
その店員は「味が違う」と言われたのをクレームと思ったのでしょうか?
同じ銘柄のコーヒー豆は味が変わらないと思っているのでしょうか?
どうして「自分には分からないけれど味が違うのかもしれない」と思わなかったのでしょうか?
もしかしてマニュアルには
「客からのクレームにはとにかく謝罪すること」と書いてあるのでしょうか?
ところが、人間、会話がかみ合わないまま謝罪だけされると余計に腹が立つようです。
マニュアル通りのことしか言わないなら機械を相手にしたほうがあきらめがつきます。
「パスワードが違います」「パスワードが違います」「パスワードが違います」
相手を怒らせるには「相手の言い分を無視して、ひたすら謝罪すること」が効果的なようです。
相手が真剣になればなるほど「理解してもらえる筈だ」という心理が働くため、
それを逆手に取るということです。
味について・・・
当たり前のことですが同じ豆でもコーヒーの味が変わることはあります。
コーヒーカプセルを売りにするメーカーは「同じカプセルは同じ味」としていますが、
同じ味になるように調整しているそうです。
世界最大の食品メーカーのコーヒーカプセルですら飲めなくなるくらい味が変わるのです。
当然です。
採れた年が違う、採れた畑が違う、まったく同じ味になる筈がないからです。
味覚について・・・
日本人だけ、ほとんどの人が「旨味」を感じ取ることのできる民族です。
辛・酸・鹹・苦・甘+旨味の六味を味わえるからこそ、日本人には和食なのです。
- S.T. -